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…………………。
 




 
 
 阿南への車中、我々は阿南に関する情報を集めることにした。その結果分かったことは、

1:阿南市は、徳島で一番面積の広い市町村である。
2:阿南市は、緑が豊富である。

 ダメだ、広くて緑が豊富って、田舎の必須条件じゃないか。どうしてそんな所を迂闊にも選んでしまったんだ。

列車は40分ほどで阿南駅に到着。

暗ッ!

嗚呼……終わった……野宿だ……。

 とりあえず、メインストリートを歩いてみることにした。しかし、コンビニと呼ばれる店は全く見受けられない。あるのは飲み屋かスナックだけ。どこかのカラオケの歌声が聞こえる。飲み屋の入り口の灯り以外に、街を照らす灯りは無かった。さすが、徳島最大の面積を誇る阿南市である。

 駅のそばにあったビジネスホテルを、今夜の寝床に決定。まぁ、そこしか選択肢が無かったんだけどね。で、その建物に入ると、フロントでは、犬を抱えたマダムがテレビを見ていた。

 ……ヤバイな……。第六感が、そう伝えてきた。

 他に誰も泊まっている様子は見られない。とりあえず、9000円のツインルームの部屋に決定。この値段を覚えていて下さい。

 部屋は広くて、普通のビジネスホテルの2倍位の面積。これなら9000円で納得も……行かなかった。ソファーがボロボロでバネが露出していた。ベッドのシーツもシミが目立ち、部屋の時計は故障、浴衣が人間ドッグの時に着るアレ。そして、とどめは、ミスターの証言。

蛇口から真っ赤な液体が出た!

 錆でした、サビ。これが、1分にもわたって出続けたのである。おい、この部屋に客が泊まるのは何年振りだ!?こんな部屋で誰が寝られるか!

ミスター寝てる……。

まぁ、ゴキがいないのがせめてもの救いだな。9000円、9000円、この部屋9000円……税込9450円……。